読書&映画感想覚え書き

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わたしを離さないで
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

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人は、何をもって「人である」とみなされるのだろうか。
何を見て何を感じ、他者と触れ合い友情を培い、愛を育み、
何を記憶に刻みつけるのか、
そうして初めて、人は「人として生きる」のでは、なかろうか。

「提供者」と呼ばれる人々の世話をする
優秀な介護人である主人公キャシーは、今年いっぱいで
介護人の仕事を退こうと考え、「へールシャム」という施設で
一緒に育ちやがてキャシーが介護人として世話をした
ルースとトミーとの関わりを回想する。
思春期の子供達の微妙な心の揺れが穏やかな語り口で
綴られていく。
けれど、どこか何かがもどかしい。
やがて物語の終盤になって、「へールシャム」の真実が
明らかになる。
『目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱きかかえている。
心の中では消えつつある世界だとわかっているのに、
それを抱き締めて、離さないで、離さないでと懇願している』
この文章が強く心に残った。

剱岳 点の記
映画化されると知ってから、ずっと楽しみにしていた。
浅野忠信 香川照之 松田龍平 仲村トオル・・・
好きな俳優さん達が大勢出演している。
そして何より、剱岳、立山連峰の雄大で美しい映像を期待していた。

2時間半という長さをまったく感じさせない素晴らしい作品だった。
前人未到の険しい「剱岳」を測量するという困難な任務を託された
陸軍陸地測量部の柴崎芳太郎と彼の元に集まった測量部員達、
柴崎の先輩古田盛作から紹介された案内人宇治長次郎、
長次郎が集めた地元の人夫達、「剱岳」初登頂を目指す
日本山岳会・小島烏水のグループ・・・男達が熱い。
夏八木勲さん演じる行者が本物の行者のように尊く人間離れした様相だった。
行者がお篭りしていた「玉殿の岩屋」へは、去年の秋訪れた場所だったので
嬉しかった。あの場所へ行くだけでも自分にしては大変だったので、
この映画の撮影の苦労を思うとただただ感心する。
幾多の苦難を乗り越え、冷静にひたむきに任務を遂行しようとし続ける
柴崎芳太郎を演じる浅野忠信が格好良かった。
そしてそれ以上に愚直なまでに「山案内人」であろうとする自分に反抗する息子との
葛藤を抱えつつ、柴崎ら測量隊へ献身を尽くす長次郎を演じる香川照之の
演技に惹きつけられた。本当に魅力的な役者さんだ。
松田龍平が演じる生田信の人間的な成長ぶりも良かった。
柴崎の妻・葉津よを演じた宮崎あおいの可憐さは際立っていたし、
優しくおおらかに包み込むような長次郎の妻役・鈴木砂羽さんも良かった。
長次郎へ届けられた息子の手紙には、ほろりとさせられたし、
最後の手旗信号の場面では、胸が熱くなった。
この映画を劇場の大画面で見れて幸せだ。

CGではない本物の美しさがあった。

フューネラル 流血の街
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(2007/06/01)
クリストファー・ウォーケンクリス・ペン

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クリストファー・ウォーケン、ヴィンセント・ギャロ、ベニチオ・デルトロが共演しているということで、
たまたま目に留まったTV放送を見たけれど、想像以上に惹き付けられる映画だった。
時代は30年代、ニューヨークの閑静な住宅街を棺を乗せた車が静かに走って来る。
棺に納められているのは、22歳の若さで凶弾に倒れたこの家の三男ジョニー(ヴィンセント・ギャロ)だ。初っ端から死体で登場だけれど、正に“死美人”だ。
葬儀を取り仕切るのは、長兄レイ(クリストファー・ウォーケン)。
マフィア役がもう本当に似合う。
遅れて駆けつけたのは、次男チェズ(クリス・ペン)。
弟殺しの犯人への復讐を決意したレイは、ジョニーと対立していた
ガスパー(ベニチオ・デルトロ)を疑い、報復を誓う。
敵役のベニチオ・デルトロも、本当に役に合っていて流石だ。
けれど一番印象深かったのは、クリス・ペンだ。
ひょうきんに歌い踊り、豊かに感情を露わにする姿。
自殺して仕舞った三兄弟の父親の血を色濃く受け継いだのか、
神経を病み、凶暴さを抑え切れない彼だけれど、
終盤、チェズが妻の胸に縋って涙するシーンにグッと来た。
彼の凶暴性を恐れながらも必死で受け止めようとする
妻の愛の姿が愛しかった。
長兄レイの妻がジョニーを失って悲しむ彼の恋人に
『タフを装っているだけの男達』と語る場面があるけれど、
マフィアの掟の為、男の誇りの為に、女子供との平和を打ち捨てて
絶望の道を歩もうとする男達の哀しさ、愚かしさそして虚しさが
そしてそんな男達を愛してしまった女達の哀しい、けれど
どこか聖母マリアにも通じるような愛を強く感じた。

スノーボール・アーススノーボール・アース
(2004/02/26)
ガブリエル・ウォーカー

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氷はだれの胎から生まれ出たか。そして天の白い霜はだれが生んだか。
水はその身を隠し石のようになり、深い淵の面は凍てつく。 ヨブ記


ふるえているのは寒さのせいだろ 恐いんじゃないね
毎日、吹雪、吹雪、氷の世界 「氷の世界」井上陽水

まず初めに氷ありき。それが北極と南極にある拠点からじわじわと
広がりはじめ、海の表面を凍らせ、少しずつ陸上にも進出した。
青い惑星がまごうかたなき白に変わる。            「スノーボール・アース」ガブリエル・ウォーカー



遠い未来、新たなパンゲアが出来るだろう。
凍った極の海がゆっくりと凍りはじめて、そのうち急速に
世界は氷に覆われるだろう。
地球はその時、青から真っ白へと姿を変えるのだろう。
その時私達の子孫はどうしているだろう。
命は大打撃を受けるだろうが、地球の全凍結は、きっと
地球の生命たちの大爆発を引き起こすのだろう。
「ビルマニア」PVの最後のシーンのように
きっとそれは、途轍もない輝きなのだろうね。

緑色の髪の少年
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(2006/12/14)
リチャード・ライオンバーバラ・ヘイル

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ある町の警察署にひとりの丸坊主の男の子が保護されていた。
身元を全く話そうとしない彼に手を焼いて、児童心理学の博士の力を借りることになる。
エヴァンス博士に心を開いた少年は、身の上を語り始める。
ロンドンで裕福な家庭で育ったこと、戦火を避けて自分は疎開したこと、
親戚の家を転々としたこと、グランパという芸人の家で暮らすようになったこと。
学校では、美しいブランド先生が優しく迎えてくれてすぐ友達も出来て楽しい毎日だったこと。
けれど或る日ピーターは、両親が既にこの世になく自分が戦災孤児であることを知る。
そして突然一夜のうちに髪の毛が緑になってしまう。
ただ髪の色が緑に為ったということだけで、学校の皆も街中の大人達も態度を一変させる。
「異端」というものを徹底的に排除しようとする。
この映画は、「反戦」というテーマだろうけれど、
私は、この「異端者への徹底的な差別・排除」「多数派の傲慢さ」
「我こそは正義」であると思い込む人間の愚かしさ・浅ましさは、人間の持つ
根源的な問題だと思う。
ピーターは、森の中で、戦争孤児救済のポスターに描かれた孤児たちの集団に出逢う。
『緑色は、春の色だ。希望の色だ。君だからこそ、君にしか出来ない事をして欲しい。』
そう告げられてピーターは、世の中から戦争が無くなるように、自分の緑の髪のことを
街中の人々に話し始める。
けれど、「自分も異端に陥るかもしれない」と恐れる人々は遂に
ピーターの髪の毛を剃らせてしまう。
純真な心が踏みにじられた。
ピーターが語り終えた時、ドアの向こうでは、グランパや教師、医師が迎えに駆けつけていた。
グランパが持参した両親からピーターに宛てられた手紙が読み上げられる。
心から息子を愛する両親の心と願い。
ピーターを演じたディーン・ストックウェルが本当に素晴らしい。
グランパ役のパット・オブライエンも、優しく温もりがもの凄く愛おしくて、
最後にピーターとグランパが家に帰って行くシーンがほのぼの暖かくて嬉しかった。
これは、おとぎ話なのだろう。
けれど、本当に大切な事は何か?信じるということの意味を
考えさせられる大きな力を持つ映画だと思う。
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